絵本作家・葉祥明は1973年、26歳の時にデビューしました。当時、東京で実弟である葉山祥鼎の部屋に住み込みながら絵本作家としての道を歩んでいきます。40年以上の制作活動の中で、7000点を越える作品を生み出し、400冊余りの書籍と関わってきました。2016年に70歳になった今も、多くの作品を描き私たちを魅了し続けています。
弟の祥鼎は現在は熊本にある葉祥阿蘇高原絵本美術館の館長として葉祥明の活動を支える一方で、自身も童話作家として作品を発表しています。「キツネのフーくんと風の郵便屋さん」は、そんな兄弟の初のコラボ作品です。自然豊かな阿蘇で生活をしている祥鼎は、そこに生きるキジやイノシシなど様々な動物に出会います。本作の主人公も美術館の丘の上で実際に出会ったキツネです。キツネの「フーくん」と名付けられた主人公が「風の郵便屋さん」に連れられ世界のいろいろなお話を聞いたり体験する、夢と冒険の物語です。兄弟で幼い頃に遊んだ阿蘇を舞台にした本作は、二人の故郷への愛情を感じる心あたたまる作品となりました。
『緑豊かな自然は、童話や詩の源泉です。この物語の舞台である阿蘇は、われわれ兄弟の共通の魂の故郷です。兄弟での初のコラボレーションは、阿蘇に対する二人からのラブレターのような気がしています。――葉 祥明(あとがきより)』