中里の写真の原点はウジェーヌ・アジェにあります。
アジェから出発して、写真からは遠い世界のようには見える、セザンヌ、モランディ、デ・クーニング等の作品に触発されて、カラフルな作品に変貌していきます。
一般的な写真家が拘り続けるバライタ紙変調に疑問を感じ始めたのが、2015年の展覧会でした。彼の中には写真に拘るより、描くことや、モノを作ることに、より興味があるようです。
アトリエの壁に直接絵を描き、その前に小さなオブジェ(自作)を配置する。ガラス板を重ねることで、あるイメージ作り、写真によって変容していく様を撮る。そこには現場では見えてこないモノが映し出されてくる。結果的にはもう、セザンヌやデ・クーニングとは似て非なる、カオスの世界を映し出していくように思えます。混沌とはしていますが、写真の世界を押し広げようとしている中里の作品をご高覧、ご掲載いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。 双ギャラリー 塚本豊子