湘南地域には、温暖な気候や交通の利便性により近代以降多くの芸術家が移り住みました。戦後は山本丘人や工藤甲人ら創画会の中心的な画家が居を構え、旺盛な制作活動を展開します。
創画会のルーツは、戦後まもない1948年にさかのぼります。敗戦により既存の美的価値観が揺らぐ中で、日本画存亡の危機感を背景に東京と京都の若手の画家たちによって組織されたのが在野の美術団体・創造美術でした。西洋の近代、同時代美術を参照しながら新しい日本画の創出を目指した同団体は、新制作協会日本画部を経て、1974年に創画会へと体制を変更しながらも、一貫して在野の立場を保ちつつ日本画の新傾向をリードして、その存在感を示しています。
湘南の創画会ゆかりの画家として本展で取り上げるのは、創造美術設立時からの中心作家・山本丘人(1900-1986)、第二世代の工藤甲人(1915-2011)、堀文子(1918生)、近藤弘明(1924-2015)、加山又造(1927-2004)、第三世代の伊藤彬(1940生)、中野嘉之(1946生)、内田あぐり(1949生)、山本直彰(1950生)のほか、第四世代の斉藤典彦(1957生)です。
現在活躍中の画家たちは、既に創画会を退会し、各自の道を歩んでいますが、その進取果敢な制作は、まさに創画会の日本画革新の精神を受け継いでいます。
本展では、創設以来約70年にわたり日本画を牽引してきた湘南ゆかりの創画会10人の画家たちの作品約40点により、時代のうつろいとともに変化し続ける日本画のありようをご紹介します。