絵を描くことを無償の喜びとしている人が画家として立つ、このことが真にかなうのは自ら表現したものがより多くの人を共感させ、魅了し、他の何者も表現しえない世界をつくりだしてこそといえます。また一方で、先達もそうであったように、独自の世界に甘んじることなく創造と破壊を繰り返しながら果てしのない高みに向かう挑戦者でありつづけること、その姿勢を失わないことも画家として必要なことでしょう。
私たちの郷土秋田は平福穂庵・百穂父子、寺崎廣業、福田豊四郎など日本画の革新を目指し画壇に一時代を画した作家たちを多く輩出してきました。その伝統は現代日本画界をリードする団体展のメンバーにも脈々と受け継がれています。
師高橋萬年ゆずりの繊細かつ巧みな線描を駆使し、美しい色彩とともに女性美の世界を華麗に表現する横山津恵(1916-/秋田県山本町出身)、ふだん何気なく見ている風景や草花たち、その時間の経過とともに移ろいゆくものたちの一瞬の煌きを、真摯に、暖かなまなざしで静謐な世界に描き止める高橋清見(1932-/秋田県千畑町出身)、彼らは「人物」・「風景」・「花鳥」とそれぞれのテーマで画家としての道を確立してきました。
本展では院展・創画会・日展でそれぞれ活躍する彼ら三人の作家にスポットをあて、画業の変遷をたどるとともに、三者の個性が光るテーマの中にみる清新な美の饗宴をじっくりと味わっていただこうと思います。