古くより日本では、茶器や香炉といった茶道具だけでなく、掛軸や屏風なども含めて“御道具”と総称していました。当館のコレクションを形成し、現在美術品、あるいは作品と呼ばれるこれら御道具は、長い年月の間にさまざまな持ち主の手を経て、今に伝えられています。いったいどのような人物が作品を所有していたのか、また彼らはどのように作品を入手し、いかに大切に守り伝えてきたのか―。本展では、普段ほとんど展示することのない作品の周囲、すなわち作品を収める箱や附属する書簡などの資料も一緒に展示することで、作品に残された旧蔵者たちの影を探り、作品それぞれが持つ物語の断片を紹介します。作品が今日まで辿ってきた長い道程に思いを馳せ、そのある一時期に作品を手にし、愛でてきた旧蔵者たちの想いを感じていただければ幸いです。