岡山県出身の竹久夢二(1884-1934)は、明治34(1901)年に単身上京、苦学しながら投稿したコマ絵(新聞等の紙面に挿入される独立した絵のこと)で認められ、明治42(1909)年に『夢二画集 春の巻』を出版し人気を集めました。
出版物での活躍から出発した夢二が、初めて肉筆画やスケッチを披露したのは大正元(1912)年のこと。記念すべき初個展の会場は京都府立図書館でした。また、大正5(1916)年11月から2年間京都に住み、大正7(1918)年には府立図書館で再び個展を開くなど、京都に足跡を残しています。
明治末期から大正にかけての京都では、日本画と西洋絵画の融合をはかった竹内栖鳳や、気品溢れる美人画を描いた上村松園らが充実した制作ぶりを見せていました。より若い世代の土田麦僊や小野竹喬たちは海外の新思潮に影響を受け斬新な日本画を模索し、国画創作協会の創立へと進みました。
本展では、こうした時代の京都に夢二が滞在したことに注目し、夢二の作品と資料約80点に京都の日本画約40点を合わせた約120点を一堂にご紹介します。夢二の京都滞在からちょうど100年を経た節目に、画壇とは異なる活躍の場を求めた夢二と、京都画壇の作品を引き合わせ、同時代の表現として捉え直す試みです。