「自重力シリーズ」では作品の自重(=重力)を利用したローテクによって、その位置エネルギーを、視覚的に認識できる仕草として表出する作品の制作を試みています。
作品を構成する機構や構造とその動きは、互いに絶妙な釣り合いの中で連携しています。無駄のない連鎖は形態となり、滑らかな揺らぎとなり、律儀な反復運動となります。歯車やフレームは露出し目視できます。しかし動力源は見当たりません。動力源は作品が存在していることそのものであり、動力はそこに生まれる「自重力」です。この動力の不可視性が生み出す神秘性は生命感を醸します。そして意志を持つかのように、洗練されたぎこちなさと時折みせる軽妙な裏切りによって鑑賞者と呼応します。
作品がみせる仕草は自然界の片鱗の現れであり、それを見つめることは、私たち自らが存在しているこの場を感じ、私たちを取り巻き連鎖しあうものを見つめることでもあります。そこにこのローテクを用いる必然性があり、その価値があります。鑑賞者と作品と作者と、そしてこれらを取り巻く自然界との心地よい関係を探ることができるのです。
作品の仕草と呼応し、見えない力をみつめることで、感じることの楽しさ、考えることの面白さが伝われば幸いです。