連続的に変形が可能な図形は全て同一視される。位相幾何学の考え方ではドーナツの形状(トーラス)とコーヒーカップの形状は同一であるとされる。これはまさに陶器製法に通底している。この製法のメタファーは、「晴と褻」の位相領域において「生」の中に内在している「死」と「死」の中に内在している「生」の所在を表象していることを指し示している。備前焼の源流を辿ると古墳時代中頃から奈良・平安時代以後まで作られた須恵器であること、さらに須恵器を祭祀用の土器として命名したのが祝部土器であった。直野氏の絵画作品によって位相領域化した空間において、伊勢﨑氏の陶器作品の固定性を今一度流動化させる。それが、直野氏曰く「私の絵と伊勢﨑さんの備前焼を同じ空間にただ置く」ことなのだ。
飯田高誉(インディペンデント・キューレター、森美術館理事)