空間表現を主張するフォルムたち
ハンス・ベルメールの球体関節人形で、手もなく足もないヒトガタが憂鬱そうな顔をして体を曲げながら横たわっている作品がある。これは、当時ドイツで盛んであった「健全で優勢なるアーリア民族」といった行き過ぎた健康志向とナチスドイツへの反対を表明した彼の型破りなフォルムの挑戦であり、そしてそれはアンドレ・ルブランら当時のパリのシュルレアリストに受け入れられ歓迎された。その国を超えての主張は、人形(ヒトガタ)によって新しいアートとして生成された。
今回、様々なフォルムが1つの空間の中で集約される。それは、幻想、耽美、シュルレアリズム、リアリズム、ゴシック、メルヘンなど、時代や国によって様々に多様化されたフォルムたちだ。そんな異なるフォルム1点1点がイメージを強く主張し、空間の中で繰り広げられる劇場世界はひとつとなり、見るものに大抒情詩となって入り込んでゆく。
それぞれの作家がそれぞれに創り出す作品は、必ず観覧者の心を刺激し、美しい空間芸術としての存在を保ち続けていくだろう。