TOTOギャラリー・間では、建築家・堀部安嗣氏の個展「堀部安嗣展 建築の居場所」を開催します。
建築家として26歳で独立した堀部氏は、これまで20余年にわたり、住宅をメインにゲストハウスなど、80を越える作品を手掛けてきました。そんな堀部氏のつくり出す空間は、多角形などの幾何学をベースとしたフォルムと端正な外観、そしてそれらを構成する木や石、コンクリートなど巧みな素材使いと収まりの美しさにあると言えます。また近年では、地域住民のための集会所や寺院の施設といった公共性のある建築も手掛け、2013年に竣工した「竹林寺納骨堂」(高知県)が、「敷地環境に溶け込みつつ、鉄筋コンクリートと木材を用いた現代的な構法と精緻なディテール、職人技の手仕事によって、静謐で凛とした空間をつくり上げ、境内において納骨堂を超えた存在になっている」(AIJウェブサイト「選考過程」より抜粋)ことが高く評価され、「2016年日本建築学会賞(作品)」を受賞しました。
本展では、建築の真髄を伝えるべく、代表作である「竹林寺納骨堂」や「阿佐ヶ谷の書庫」を含む14作品による短編映画を制作し、会場で上映いたします。個々の物語からは、それぞれの建築と月日を共にしてきたお施主様へのインタビューやそこを訪れる人びとの様子、周囲の環境との関わりなどから、作品のその時々の表情を読み取ることができます。そしてそれらの物語を通して、堀部氏の建築が、建築家個人の精神の発露であると同時に、施工から完成、その後に至るまで、多くの人に支えられ共に時を重ねていく存在であることを感じていただけることと思います。また会場には、日々作品が生み出される事務所のインテリアを再現し、建築が生まれるまでの過程をスタディ模型から氏愛用の設計道具、堀部氏が影響を受けた建築などを通して紹介します。
短編映画は、「阿佐ヶ谷の書庫(経済学者の蔵書と亡き祖父の仏壇を納めた都心の極小書庫)」、「竹林寺納骨堂(死者の魂と向き合う空間)」、「イヴェール ボスケ(若いオーナーの情熱で始まった小さな洋菓子店+カフェ)」、等を予定。
「建築の居場所」と名づけられた本展のタイトルには、自然との関わりが希薄になっている現代において、私たちに本来備わっている「心地よい空間」の記憶を取り戻し、それぞれが本来の居場所を見つけて欲しいというメッセージも込められています。