石井林響(いしい りんきょう、1884-1930)は、千葉県山武郡士気本郷町(現 千葉市)に生まれ、16歳で上京して橋本雅邦に学びました。画業前半は天風の雅号を用い、主として取り組んだ歴史画において完成度の高い制作を重ねて衆目を集めました。その後、自然に回帰した南画的な制作に移行し、雅号も林響と号して、中国風俗や国内田園風景などを伸びやかに描きました。故郷の房総に題を求めた作品も多く、晩年は郷里に近い大網町(現 大網白里市)に画房・白閑亭を建てて移り住み、自然と交わりながら制作に取り組みました。
西山翠嶂(にしやま すいしょう、1879-1958)は、京都伏見に生まれ、15歳で竹内栖鳳の門に入るとともに、京都市立美術工芸学校で日本画を修めました。以後、同校や京都市立絵画専門学校で後進の指導に当たり、画塾青甲社(しょうこうしゃ)においても多くの子弟を育てました。制作では、歴史画・人物画・山水画・花鳥動物画など様々な分野で秀作を生み出しており、師・栖鳳の教えを引き継いだ円山四条派伝統の写生をベースとし、そこに文学的意味を求めて現実を再構成した抒情(じょじょう)性あふれる制作を展開しました。
本展では、あらゆる主題について幅広い作風を示した両画家の作品30点を展示します。多様なテーマを巧みに描き上げ、日本美術史に一篇を残した東西両巨匠の、多様な美の世界をご堪能ください。
また、特別出品として、両画家に学び、個性的な創作活動を繰り広げた秋野不矩の作品9点を展示します。