20世紀アメリカの画家サム・フランシス(Sam Francis, 1923-1994)は、カリフォルニア州サン・マテオに生まれました。はじめ大学で植物学や医学、心理学などを学びましたが、兵役中の飛行訓練時に事故に遭い、それがもとで病を患い、数年に及ぶ入院生活を余儀なくされます。この間にセラピーとして絵筆をとりました。退院後は、復学して絵画と美術史学を専攻。同時代の抽象表現主義に親しみながら、自己のスタイルを模索し、パリで画家としてデビューします。その後は世界を股にかけて精力的に活動を続け、色彩がほとばしる独自の作風を展開しました。フランシスは1957年に初来日し、「アール・アンフォルメル(Art Informel)」への強い関心を美術関係者の間に引き起こすなど、日本の現代美術の文脈の中でも重要な位置を占めています。同時に我が国の詩人や音楽家ら文化人たちと親しく交流しており、日本とゆかりの深い人物であるといえましょう。
本展は、サム・フランシス作品に関して世界でも指折りのコレクションを有する出光美術館より、国内初公開の大型作品を含む、初期から晩年までの代表的な作品を選りすぐり、その全体像に迫ろうとするものです。潤いに充ちた悦楽の表現者サム・フランシスの華麗なる世界をこの機会にぜひお楽しみください。