洋画家・宮本三郎(1905-1974)の青春時代をご紹介した前会期に続き、本展ではその後半生を、第二次世界大戦の終戦を起点として辿ります。
戦時下も従軍作家として筆を握った宮本は、戦後、あらゆるものごとが覆った状況のなかで、再出発の道を歩み始めます。終戦の前年から身を寄せていた郷里の石川県小松市などにて風景や家族をモデルとした穏やかな日常場面を中心に描く一方、第二紀会(現・二紀会)の設立に携わり、画壇への復帰を果たしました。1948(昭和23)年には四年間の疎開生活を終えて世田谷区の自宅に居を戻し、さらにその四年後には夫人を伴って二度目の欧州旅行へと旅立ちます。50年代半ば頃からは、西洋から日本の美術界に押し寄せた抽象表現の波にもがきつつも、装飾的な画面に艶やかさを湛えた独自の作風を深化せてゆき、やがてはその晩年の到達点ともいうべき絢爛な裸婦像へと辿り着くのでした。
激動の時代にあって、つねに自らの制作と向き合い表現上の実験を重ねた宮本三郎―絶筆《假眠》に至るまで、その絵筆が遺した創造の道筋をご覧ください。