更紗 (さらさ) は、さまざまに模様染めがほどこされた綿布です。インドにはじまり、17世紀頃からは交易品として世界各地へと広まりました。フランスを代表する西洋更紗であるトワル・ド・ジュイ(ジュイの布の意)は、18世紀後半にクリストフ=フィリップ・オーベルカンプ(1738-1815)が、ヴェルサイユ近郊の村ジュイ=アン=ジョザスに設立した染色工場から生まれました。トワル・ド・ジュイは、当時の最先端の技術を駆使したデザイン性の高い花模様や田園風景のモティーフが大きな特徴です。その人気は高く、王妃マリー・アントワネットが愛用するなど、室内装飾や衣裳などに取り入れられて一世を風靡し、ヨーロッパの染織産業にも影響を及ぼしました。
本展では、西洋更紗トワル・ド・ジュイの世界を本格的にご紹介するものです。西洋更紗の起源であり、日本でも更紗熱を生んだインド更紗などを併せてご覧いただき、その伝播の一端をひもときます。トワル・ド・ジュイ美術館の所蔵品を中心に、国内外の貴重なコレクションから約150点が出品されます。