渡邊榮一は、ヨーロッパでも、もっとも古いとされる伝統的なビュランによる銅版画家です。
伝統的な宝飾職人の技法は慎重を重ね、正確さと熟練を要し、技術的にはもっともむずかしいものとされているため、現在でもその作家はごく限られています。ビュランの仕事は、長い時間と不屈の忍耐を必要とするため、年に5~6点しか制作が出来ないと言われていますが、氏の技法は、ますますの冴えを見せ、拡張の高い抒情は、愛好家の注目を受けており、1970年に第1回版画グランプリ展で大賞を受賞依頼、銅版画の技法では第一人者と高い評価を受けています。
渡邊氏は、1947年に山形市に生まれ、小中学生時代の4年間を酒田市でも過ごし、第二の故郷と言われるほど酒田市とは縁の深い作家として知られています。
渡邊氏は大学在学中に、銅版画家、池田満寿夫に触発されて銅版画を刻むようになり、野間伝治の主催する新銅版画工房に入り銅版画家としての制作活動が始まりました。その作風はドイツ・ルネサンスの巨匠デューラーが好きだというように、写実技法には、北欧ルネサンスふうの味わいや、ドイツ、オランダなどのアカデミックな様式から作品が出発しており、最近では少年の夢想をテーマに銅版画、油彩画に取り組んでいます。
本展では、氏の初期の作品から油彩画を含めた最新の作品までを一同にご紹介いたします。