2016年4月、熊本・大分地方を襲った未曾有の大地震は、多くの建物や人々の生活に甚大なダメージを与え、今日現在も復旧に向けた活動が続いています。
そのような中、熊本市現代美術館ギャラリーⅢでは、111回目の企画として「〇〇(マルオ)の食卓」展を開催します。
本震の3日後、天草の丸尾三兄弟から、お見舞いと同時に、予定していた展覧会の内容変更を相談する電話がありました。地震の被害で、多くの家庭で器が割れ、人々は避難所や車で寝泊まりし、支援物資や炊き出しを紙皿で食べていた頃です。
「ギャラリーに来た人が、無料で器を持って帰れるような展示にしたい」
お気に入りの器で、美味しい食事を、大好きな人達と一緒に食べる。そんなごく当たり前のことが、どれだけ尊いことか、私たちは震災を通して改めて実感しました。陶芸は、私たちの暮らしに最も身近なアートの一つです。丸尾三兄弟の天草での幅広い活動や、日々、増え続けていく食卓の写真を通して、その向こうにある‘日常の復興’に思いを馳せていただければ幸いです。
(坂本顕子 / 熊本市現代美術館主任学芸員)