鈴木大拙没後五十年記念展の「心」
禅と仏教文化そして日本の精神を世界へ伝えた鈴木大拙(1870~1966)。その言葉は没後五十年を迎える現在も国境を超えて普遍に響き、顕彰と影響が止みません。
松ヶ岡文庫は約七万冊の仏教書籍を蔵する日本有数の文庫です。大拙により昭和二十年(1945)、北鎌倉に設立されました。また大拙が起居し研究と執筆を続けた場所として知られ、実際に用いた書籍や書簡などゆかりの品々を数多く伝えています。
本展は松ヶ岡文庫の貴重な所蔵品から構成され、手稿や映像資料により大拙の姿を鮮やかに描きます。また大拙と松ヶ岡文庫に重なる絆にも注目しました。夫人ビアトリス・レーンや西田幾多郎、柳宗悦らに関わる書簡や墨蹟、柳を通して縁の生まれた民藝の作家らによる陶器などから、松ヶ岡文庫を巡り昭和の文化人達が深めた交流と信頼を展観します。
さらに優美な雰囲気を備える観音菩薩半跏像や東大寺大仏の蓮弁拓本、神仏が刻まれた江戸から明治時代の版木など同文庫が有する豊かな文化資産も出品します。中でも、時に精緻で時に素朴な表情を持つこれら版木は新刷の版画と共にこの度初公開となるものです。
鈴木大拙そして松ヶ岡文庫の歴史に宿る心と文化の積層。その真が満ちた至高の扉が今開きます。この機会に是非ご覧下さい。