今日、日本のマンガは、多彩な描写とストーリーで世界に冠たる表現性を獲得してきたといえます。なかでも52年もの長きにわたって普遍的なテーマに真摯に取り組んできたマンガ家が<みつはしちかこ>です。彼女が描く『小さな恋のものがたり』は、ちんちくりんの女子高生「チッチ」とノッポでイケメンの「サリー」が織りなす淡くせつない恋心を描いた純愛学園ストーリーです。二人の純粋な片思い(作者談)の物語は、青春の甘くせつない思い出として多くの読者の共感を呼び、今なお愛されている不朽の名作です。
チッチのひた向きな姿と爽やかでユーモアに満ちたストーリーもさることながら、作中に添えられた詩と絵のハーモニーも作品を印象づける魅力として、幅広い世代に愛される一因となっています。
2014年、惜しまれながら最終巻を迎えた『小さな恋のものがたり』ですが、本展ではこの『小さな恋のものがたり』を中心に、『ハーイあっこです』『わたがしふうちゃん』など、<みつはしちかこ>がこれまでに描いたマンガ作品をたどりながら、彼女の活動を振りかえるとともに、マンガに込めた思いを探ってみたいと思います。