横山拓也の作品は、豊かな質感と人の手の跡を感じさせる造形で、圧倒的な存在感を放ちます。繊細な印象の白い作品、力強く輝く黒い作品、さりげない佇まいの緑の作品。色、質感、形が共鳴し合い、それぞれが「あるべき」状態に作り上げられたように見えます。
作家は作品を理想の形に近づけるのではなく、素材の導きを辿るようにかたちづくります。展覧会タイトルにある「テクネー」は「テクノロジー」の語源となるギリシャ語で、人間が自然の中に真理を発見し、開示する技術を指します。横山の陶芸には「テクネー」と同様の作用が働きます。粘土に触れ少しずつ力を加えるうち、素材独自の運動が見えてくる。それに応えてアシストするうち、粘土の意思に沿った形になってゆく。土を制するのではなく、素材との共同作業で既にそこにあるものをすくいとるように作陶してゆきます。素材と自身の運動の連なりによる制作活動を、横山は「演技や踊りに近い、より身体的で、スポーツのような要素がある」と表現します。
本展覧会に出展された「壺」には、大きな自然の中に潜んだ丸い形をそのまま引き出してきたような壮大さがあります。天辺に2mm程度の小さな穴があることから作品は壺とも、その穴の微小さからオブジェとも捉えることができます。横山は芸術・工芸というカテゴリーにとらわれることなく、素材と自身の成し得る柔軟な表現を切り開きます。