備前国(現、岡山県)は気候や風土に恵まれ良質の鉄を産出したことから、古代から近世にいたるまで多くの名工・名刀を輩出してきました。現在国宝に指定されている日本刀のうち約5割、重要文化財の約4割は備前刀で占められていることからも、備前国で制作されてきた日本刀の質の高さがうかがえます。本展では、平安時代から室町時代後期までに制作された備前刀の魅力を、姿や刃文、そして鍛えられた地鉄に注目して、各時代ごとに分かりやすくご紹介いたします。
平安時代の代表的な刀工は、吉包や近包、そして、正恒らです。古備前派と称されるかれらの作風は、平安貴族に好まれた小切先で細身の優美な姿が特徴的です。鎌倉時代になると、武士の好みを反映してか、吉房や助真に代表される華やかな重花丁子の刃文を焼く一文字派、光忠や長光といった長船派が活躍します。あわせて、戦いのスタイルに応じて長さや太さが変化していく、室町時代の備前刀もご覧いただきます。
本展を通じて、世界に誇る備前刀の美しさと、その技術を伝承してきた刀工たちの営みをご堪能いただけましたら幸いです。