不思議な世界観と、モノクロームの緻密な線描で、世界中に熱狂的なファンをもつエドワード・ゴーリー(Edward Gorey, 1925-2000)。日本では異色の絵本作家として知られており、『ギャシュリークラムのちびっ子たち』や『うろんな客』、『不幸な子供』などの絵本が次々と邦訳され、人気が高まっています。ミステリー小説のような物語と、押韻・造語・古語などを駆使したテキスト、そして、陰影や背景までもがペンで細かく描かれた魅惑的なイラスト。ゴーリーの作品は、不気味でナンセンス、そして優雅なユーモアが余韻となり、時に読者を不安な気持ちに陥れます。その魅力に多くの人々が虜となり、シュルレアリストの画家マックス・エルンストや、ムーミンの作者トーベ・ヤンソンなどもゴーリー作品の愛好家でした。しかし、邦訳されている絵本は、ゴーリーというアーティストのほんの一面に過ぎません。彼自身がテキストとイラストの両方を手がけた「主著 (Primary Books)」だけで100冊を超え、さらに、他著の挿絵、舞台と衣装のデザイン、演劇やバレエのポスターなど、制作活動と才能は多岐にわたります。
本展は、ゴーリーの没後、エドワード・ゴーリー公益信託とブランディーワイン・リバー美術館によって準備され、各国を巡回した原画展を初めて日本で展示するものです。さらに、ゴーリーの愛好家として多くの作品を収集されている濱中利信氏のコレクションを加え、貴重な原画・書籍・資料など約350点を展示し、ゴーリーの多彩な制作活動にみる、謎に満ちた優雅な秘密に迫ります。