川田祐子は1962年に東京・小金井市に生まれ、その後は89年まで横須賀に育ちます。
カッターで画面を削る「スクラッチ」技法や、カンヴァスの上にアクリルで細かく筆跡を置き重ねていく「ハッチング」技法、そしてその混合手法へと歩み、膨大で緻密な営みの隙間から光が差し込んでくるような、独自の絵画世界を作り上げてきました。
2012年に長野へ拠点を移すと、空や草花など「自然」を強く感じさせるモチーフが現れてきます。2015年には豊かな色彩はそのままに、アクリルから一転して油彩で対象にクローズアップし、木漏れ日がちらちらと揺れるような作風へと変化しています。
「千年 (せんねん) の翠 (みどり)」とは、松の木の緑色が千年の長い年月を経ても風雪に耐えぬいて、少しもその色を変えないという意味です。本展においては、絶えず移ろい変化し続けながら、今なお目指すものの途上にある川田祐子の世界を、画業の初めから近・新作を中心とした約25点でご紹介いたします。