風間サチコは、浮世絵など民衆的伝統をもつ木版画の技術を用い、現代日本のマンガ文化から多くの養分を得つつも、社会に対する深い洞察を込めた、空想的でアイロニカルな独自のイメージ世界を創造する作家です。版画ではあっても一点しか制作しないモノタイプを基本とし、大型作品も手がけるなど迫力ある作風と、シリアスな社会的主題の中にも独特のユーモアと笑いを含んだ表現が注目を集め、近年高い評価を得ています。
「たゆまぬぼくら」は、東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、日本におけるスポーツ文化、学校での体育教育にあふれる、精神論的な健康至上主義をテーマとしています。選手らが語る「錬成すれば勝てる」「夢は実現できる」といった考え方の根底に、戦前から続く近代合理主義の徹底があります。公開制作では、作家自身が新作の銀屏風の前に着座し、近代オリンピックと聖戦のシンボル像「近代五種麿」と、大会出場選手の木版画を作る予定です。作家ならではのクリエイティブなセンスが光ります。