立石大河亞/タイガー立石/立石紘一(1941-98)は、1963年、第15回読売アンデパンダン展に出品し、美術家としてのキャリアをスタートさせました。65年から漫画を描き始め、ほどなく新聞や雑誌に連載をもつまでになり、漫画家としての地位を確立します。ミラノへと拠点を移した69年には、漫画の手法である「コマ割り」を絵画にもちこみ、ストーリー性や時間的要素を取り入れた絵画を手がけました。
大学で油彩を学んだ横山裕一(1967-)は、ベニヤ板にペンキで風景や人物を描きながら、自身の絵画のスタイルを模索する日々を過ごしますが、イラストの仕事を通じて、2004年に『ニュー土木』で単行本デビューを果たします。「ネオ漫画」と称される横山の漫画に明確なストーリー展開はなく、複数の登場人物による非友好的かつ目的不明な行為、謎の物体が移動、変形するさまを描写することにより、純粋な時間の流れが表されます。
本展覧会では、立石大河亞のコマ割り絵画を含む油彩、60年代から80年代に制作した漫画原画、そして、横山裕一が初期に手がけた絵画、新作漫画『アイスランド』、本展のために描き下ろした漫画原画を紹介します。立石も横山も制作に際し、私たちの暮らす世界を参照しながら、現実を引きずることなくもうひとつの世界を大胆に提示します。不条理に満ちた、妙な世界の住人が繰り広げる意味不明な会話、ナンセンスな行為など、一見「なんでもあり」な状況がもたらすユーモアは、翻って私たちの世界を改めて見つめる機会となるでしょう。