イサム・ノグチ(1904‐1988)は、日本人の父、アメリカ人の母を持つ20世紀を代表する彫刻家です。その活動は彫刻の他、舞台美術、庭園、プロダクトデザイン、大地そのものを彫刻するかのような大規模な空間デザインなど、多岐にわたります。ニューヨークを制作の拠点とし、日本では香川県牟礼町にアトリエを構え、晩年の代表作となる石の作品を制作しました。ここで培った石への洞察と独自の空間デザインが深く融合した作品として、石の庭「天国」があります。「天国」は草月流創始者の勅使河原蒼風が親しく交流していたノグチを全面的に信頼し、草月会館1階ロビーのデザインを依頼したもので、ノグチ自身もここで展覧会を行いました。 本展覧会は、この「天国」も展示スペースとして使用し、初期の肖像彫刻から、日本で制作した陶作品、最晩年のブロンズ作品まで、約50点によってノグチのの創造の世界をたどります。さらに、ノグチの弟であり、写真家の野口ミチオの作品をあわせて展示し、その幅広い活動を紹介します。新たな評価が高まりつつあるなかで、イサム・ノグチの作品をもう一度体感する機会となれば幸いです。