北アルプスを望む安曇野市に生まれた髙橋節郎(1914~2007)は、漆芸の分野から、型に縛られない自由な作品を制作し続け、漆芸という伝統工芸の世界に新たな風をおこし、独自の世界を表現しました。戦後、漆表現の可能性を追求し、キュビスムやシュルレアリスムといった西洋の美術様式を取り入れながら、漆黒と黄金で描く独自のスタイルを確立しました。多様な漆絵版画や乾漆立体もまた、髙橋節郎の止むことのない漆への探求心から生み出されました。
この度の企画展では、髙橋節郎作品の初期のスタイルに着目し、若き髙橋節郎に大きな影響を与えた結城素明(1875-1957)、石井柏亭(1882-1958)、宮坂勝(1895-1953)、東山魁夷(1908-1999)らの作家の作品とともに、「鎗金」技法を確立しスタイルが定まる1960年代までの初期の髙橋節郎作品を中心に紹介します。