この度、東京画廊+BTAPでは6月25日より瀧本光國個展『彫相』を開催いたします。
瀧本光國は1952年福岡県生まれ。1977年にイタリアに渡りミラノで活躍する豊福知徳に師事し、以降、伝統技法を守りながら、39年にわたり一貫して木彫の作品を制作してきました。また瀧本は古い仏像修復の専門家としても活動しています。本展は2014年の文化庁新進芸術家海外研修制度によるイタリア留学帰国後、初めての国内での個展となります。
1980年代、豊福の影響を受けてレリーフ状の抽象彫刻を制作していた瀧本は、90年代に表現を変化させ、具象へと近づいて行きます。具象とは言っても、瀧本が対象として選んできたのは滝や川、あるいは雲や煙など、見る人の記憶にかすかな残像として留まるかたちばかりです。これら流動的なかたちの表面に残されたノミ跡は、制作という行為の痕跡であると同時に、不定形のイメージを掴もうとする意識の働きを象徴するものです。
2012年の個展では、これら流動的作品に混ざって、人のかたちを備えた作品が2点展示されていました。これが瀧本の彫刻に新たな展開をもたらし、「彫相」と題した本展の開催に至りました。瀧本は不定形の向こう側へと歩を進め、人体の部分や絵画的図像など、基本的イメージの現れを彫刻の行為によって定着しようとします。「彫相」というタイトルは、視覚とかたちの関係を問い直し、映像時代における彫刻表現の可能性を探るために置かれるものです。