「愛は森に隠れている」
東日本大震災以降、どこにでもあるような当たり前の風景がとてもかけがえのないものとして目の前に立ち現れてきました。遠くに見える空があり地面があり、木々は重なりあいまっすぐだったり曲がりくねったり。さまざまな方向に伸びる枝が持つ優美な曲線。葉の重なりが生み出す不思議な空間。
すべては宇宙そのものの顕現であり、どこを取り出しても完璧な世界です。私を魅了する自然の自由で生命力にあふれるイメージは、あの福島原子力発電所の事故以降の世界に生きるために必要な何かを示唆していると感じています。
空気のような日常の風景に人は支えられ、生かされていること、そしてどこにでもある当たり前の風景の裡にある「記憶と痛み」の感覚を、描くことを通じて探るものです。