法相宗大本山興福寺は、創建以来千三百年の間、我が国の歴史・文化に深くかかわってきた奈良の名刹です。法相宗の中心寺院として栄え、幾多の戦乱や災害の中で堂塔の焼失と再建を繰り返しながらも、優れた仏教美術を育み守ってきました。
現在、興福寺では、発掘調査を基に創建時の伽藍復興が進められています。創建当初より伽藍の中心であった「中金堂(ちゅうこんどう)」の再建は約三百年ぶりであり、二〇一八年の秋に落慶の予定です。中金堂の内陣には、興福寺の教義である法相唯識の祖師が描かれた柱「法相柱(ほっそうちゅう)」が存在していたことが数々の記録に残されており、今回の中金堂再建では、仏教に造詣の深い日本画家、畠中光享氏が法相柱の柱絵制作を行いました。
本展覧会では、中金堂再建と法相柱柱絵の完成を記念し、畠中氏が描いた柱絵を奉納に先立ち初公開すると共に、畠中氏の新作・近作、そして興福寺に伝わる貴重な寺宝の数々を紹介します。