木版画家として知られている斎藤清(1907-1997)は、60年代から80年代にかけて墨画の世界でも独自の境地を切り拓きました。濃墨をこすりつけるようにして描いた60年代のインド風景・ヨーロッパ風景・韓国風景から、水彩風に描いた70年代の「野仏」、墨のにじみで雪景色を描いた80年代の「会津の冬」と、それぞれ独特の趣があります。明快な切り口でみせる版画作品に比べ、墨画では筆づかいやぼかしの微妙なニュアンスが生かされており、墨画ならではの奥行きのある画面構成も所々に見られます。
当館所蔵作品を中心にした本展では、版画作品との比較を交え、50点ほどで斎藤清の自由な墨の世界をご紹介します。