伊丹市立美術館では、昨年に引きつづき現存する日本最古の木造酒蔵で、現代彫刻展を今秋も開催いたします。
今年の作家・大久保英治は、自然のなかを歩き作品制作する作家のひとりとして知られています。最近では、鳥取県にあるアトリエを拠点に国内外の山や川、海岸などを歩き、そこで拾い集めた自然の素材で制作を続けています。
今回大久保は杉の小枝をつなぎ合わせた酒林(さかばやし・杉玉ともいい、新酒の看板として酒屋で使われた)を制作し、延宝2年(1674)に建てられた町屋に隣接する木造酒蔵内の梁に吊るしています。作家の手になる酒林の下では、杉の枝が矩形に編まれ、その中に白砂を敷き酒林の影が映し出されます。
300年という時を有す酒蔵に、大久保は果敢に現在の時空間を構成し、歴史的構造物に挑戦を試みます。私たち観賞者は拮抗する相互の空間に身を委ねることで、スリリングな関係性を体感できるでしょう。ひとりでも多くの方々にお楽しみいただきたいと思います。