江戸時代中期元文年間(1736~41)に桑名の豪商沼波弄山(ぬなみろうざん・1718~77)が別邸のあった小向村(おぶけむら・現 三重郡朝日町)に窯を築き、始めたのが「萬古焼」です。その名は弄山が自身の作品が末永く伝世することを願って捺した「萬古不易(ばんこふえき)」「萬古」の印章に由来します。
弄山一代で途絶えた萬古焼は、江戸時代後期には四日市、津、松阪などの各地で再興され、時代と共に発展を遂げました。これら弄山以後に各地で焼かれた萬古焼に対し、弄山が生み出した国内外の写し物や異国情緒あふれる茶陶の数々は「古萬古」と呼ばれ区別されています。
パラミタミュージアムでは開館以来、萬古焼を蒐集し、現在では最初期の古萬古から昭和萬古まで約1200点を収蔵、質・量ともに充実したコレクションとなり、これらを常設展示の中で展示してきました。
また弄山生誕の地にある桑名市博物館、有節萬古ゆかりの資料を多く所蔵する朝日町歴史博物館では、萬古焼の公開・研究が進められています。
本展では最初期の古萬古と、森有節(もりゆうせつ)・千秋(せんしゅう)兄弟が始めた有節萬古に焦点をあて、また有節萬古の木型や絵付け関係資料などを含め、朝日町歴史博物館・桑名市博物館・パラミタミュージアムの各館が所蔵する萬古焼の名品を一堂に展示します。
この機会に古萬古の幅広い作風と、有節萬古の腥臙脂釉(しょうえんじゆう)作品や草花文様が施された作品など細やかで優美な世界をお楽しみください。