現在の東京・東銀座界隈は、江戸より木挽(こびき)町と呼ばれ、芝居小屋などが立ち並ぶ「芝居街」として賑わっていました。
その芝居街の濃厚な雰囲気がある木挽町で少年時代を過ごした清方は、日ごろからよく芝居を観たり、雑誌『歌舞伎新報』を愛読するなど、芝居をこよなく愛する少年に育ちました。
芝居への愛は終生変わることなく、画家となってからは好んで題材にしました。中でも恋に身を焦がした娘が次々と姿を変えて踊る「京鹿子娘道成寺」は、清方の心をとらえ、数々の作品を生み出しました。また、「仮名手本忠臣蔵」のおかるや「本朝廿四孝」の濡衣など、恋人や夫に一途な女性の姿を情緒豊かに描きました。
本展覧会では、清方の芝居絵を中心に、文学作品の口絵もあわせてご紹介します。