異世界を舞台に繰り広げられる、比類なき物語
2014年、上橋菜穂子は子どもの本における最高の賞である国際アンデルセン賞作家賞を受賞しました。日本人では詩人のまど・みちおに続く2人目の栄誉です。多様な価値観や、文化的背景の異なる人々が織りなす世界を鮮やかに描きあげる作品は、世界的に高い評価を得ています。1989年の作家デビュー後、『精霊の守 (も) り人』『獣の奏者』『鹿の王』などのベストセラーを世に送り続ける上橋菜穂子は、創作においてはプロットを作らず、自らの内なる<羅針盤>の動きに合わせるようにして壮大な物語を紡いでいきます。
本展は、代表作<精霊の守り人>シリーズに描かれる多文化共生を軸として、その卓越した物語世界を紹介する初めての大規模展です。シリーズ関連資料や文化人類学の研究ノート、作者が本展のために語り下ろしたインタビュー映像などで作品の魅力に迫ります。単行本の挿画のほか、TVドラマ資料やアニメ、漫画化された作品も展示。異なるジャンルのクリエイターたちを刺激してやまない<守り人>シリーズへのアプローチもご堪能いただけます。
私たちの心の奥にある神話や伝承文学と同じように、ファンタジーや児童文学の枠をはるかに越えた、あらゆる世代に開かれた「本物の物語」がここにあります。日本語で書かれた、そして魂をゆさぶられる物語世界の素晴らしさ、面白さにぜひ触れてみてください。