戸張孤雁(1882-1927)は彫刻、絵画、版画、挿絵と幅広いジャンルで活躍した芸術家です。幼少の頃より、絵を描くことが好きであった戸張は、縁あってニューヨークに働きに出ます。しかし、仕事は長く続かず、海洋画家リチャーズの学僕として、美術学校に通いながら、挿絵画家としての研鑽を積むことになりました。荻原守衛との出会いは、その頃のことです。結核を患って帰国した後も、日本の挿絵の発展に尽力しつつ、版画にも手を染めました。本格的に彫刻に取り組んだのは、急逝した荻原の粘土を譲り受けてからのことです。病躯のため、比較的小さな彫刻が多いのが特徴ですが、日本美術院の彫刻家・石井鶴三、中原悌二郎らとともに大正期の彫刻界に新たな展開をもたらしました。
病気に苦しみながらも切実に芸術を求めた戸張孤雁。その彫刻の微妙な動勢や粘土の扱い、絵画における繊細な感情表現をご覧ください。