戦後の日本工芸の先駆者たちとそれに続き、いわゆる伝統工芸や前衛的な工芸をリードした作家たちは、伝統のなかの革新を基軸とし、その制作や作家的姿勢を対峙させつつ相互に新たな歴史をつくって発展を達成してきました。伝統の表現としての工芸は、伝承のわざと美を踏まえ、その発達とともに現代的な感覚を発揮して時代に即した用の美を連綿と創造してきました。また前衛的な造形は、日本や世界の美術動向と連動しつつ、工芸的素材や技術、日本の美質を踏まえて造形表現の可能性を広げてきました。今日それらの芸術と表現を新たな感覚で吸収し台頭した世代は、源泉となった過去を現代の視点で振り返りつつ現代の表現として標準的に認識し、新たな芸術の革新を押し進めて我が国の文化を豊かに彩っています。それは、国内に留まらず、国際的な注目を集めています。
本展覧会では、富本憲吉や松田権六、八木一夫、岡部嶺男、宮田宏平(三代藍堂)ら、戦後に躍動した日本工芸を主導した作家らを紹介し、彼らに対照させて伝統の現代を担いまた現代の造形を代表する作家の近作に焦点を当てます。多様さを増して多くの作家が世界で活躍するなか、日本工芸を革新してきた現代の特質と造形の美に着目して将来を展望します。陶磁、漆芸、金工を中心に、戦後の工芸及び現代の工芸を代表する83名をとりあげ120点の重要な作品で構成します。