塗りこめる、擦る、引っ掻く…様々な表現のかたち
画家たちは、自己の思いを表出させるに相応しい手法を獲得するため、探求を続けてきました。表現媒体としての画材についても、その選択からテクニックまで、画家たちはさまざまに研究を重ねています。本展では、梅原龍三郎、小磯良平、岡本太郎など大正・昭和の時代に日本の美術画壇で活躍した巨匠たち、さらに舟越桂、鴻池朋子、入江明日香ら現代の作家まで116人によるクレパス画154点を紹介します。
クレパスは、数ある洋画材料の中でも、唯一日本で開発された描画材料です。1925(大正14)年に誕生してから、自由画教育運動の振興とともに広く全国に普及したため、子ども向けの画材というイメージが強いものですが、その小さな画材に秘められた表現の豊かさは測り知れません。塗りこめる、擦る、引っ掻くなど、さまざまな行為を通して描かれた作品群は、鑑賞者をノスタルジックな感覚に導くと同時に、その表現の力強さゆえ、未来に繋がる可能性を感じさせます。このたびの展覧会では、当館所蔵の小磯良平、岡本太郎らの油彩画も展示し、それぞれの画材の特性と共通性に迫ります。画家の個性が際立つ名作の数々をお楽しみください。