人間の思索のみに閉じるアートに強い意識改革を求め、芸術の始まりに立ち戻って人間がものをつくることへの問い直しを試みてきた鴻池朋子の個展「根源的暴力」。今回はそのVol.3として「皮と針と糸と」を開催いたします。
本展では、反響を呼んでいる24メートルに及ぶ《皮緞帳》を始め、鴻池作品に多く見られる”縫う”という行為に焦点を当てます。ホモ・サピエンスが5万年前に針という道具を発明し、防寒服をつくり世界中へ旅立ってから今日まで続く裁縫は私たちの中に手芸として息づき、一方、美術からは劣るものとして周縁に押しやられてきた日常の手仕事です。しかしそこには、私たちの体内に封印されてきた痛みや喜びが豊かに縫い繕われ、新たな声となり外界へと解き放たれる力が潜んでいます。「人間がものをつくり生きていくということは、自然に背く行為であり根源的な暴力です」と、鴻池は再帰的な矛盾を投げかけ私たちを挑発します。ここ新潟の土地の手触りとともに、その芸術の問いを観客とともに考え、紡いでいきます。
*本展覧会では、会場内での写真撮影が可能です。