保坂の作品には、見過ごしてしまうほど変哲もない四角い箱や、壁にかかる絵画上のものがあります。それらの作品をじっと見ていると、一つ一つが微妙に異なっているのを感じてきます。連なっておかれた四角の箱は置き方やおかれる場所によってガラッと変わってくるから不思議です。
壁にある作品に目を凝らして見ていると、微かに壁に色のついた影を落としています。それは裏と言うか、後ろの部分を絵の具で丁寧に描いてあるのです。
作品の細部にまで徹底して作家の目が届いているのを、強く感じます。
作品は単に目だけで見るだけではなく、観者に作品を見る、見入ることをも教唆する作品でもあります。
細長く作ったキューブ状の形。四角のフレーム状のもの。
それらがきちんとした縞模様などに塗り分けられ、一見すると、これら一つ一つには大した個性がないとも取られがちですが、壁に、床に置かれることにより、床が、壁がまるで違う形相を帯びてくるので不思議であります。それが作家の狙いではないでしょうか。
双ギャラリーでは初めての展覧会ですが、緊張したピリッとした空気が画廊に満たすことは確かでしょう。