熊本市現代美術館では、ギャラリーⅢの109回目の企画として「淀川テクニック ゴミニケーション in 熊本!!」展を開催します。柴田英昭(1976年 岡山県出身)と松永和也(1977年 熊本県出身)により2003年に結成された淀川テクニックは、大阪・淀川を活動拠点に、落ちているゴミや漂流物、廃材を使った作品を制作してきました。現在はさらに活動の場を広げ、国内外各地に赴き、その土地に根差した作品を制作し、その独創的な作品は小中学校の美術の教科書でも紹介されています。
彼らが制作のなかで重視しているのが「ゴミニケーション」。淀川テクニックによる造語です。彼らはゴミを拾い、作品作りをする過程で、地元の人々と交流し様々なヒントを得ながら制作を進めます。捨てられることで一度はモノとしての役割を終え、命がなくなったゴミですが、淀川テクニックは、その色と形に着目して全く異なる視点でゴミを捉え直し、さらにはゴミニケーションによって、血の通った活き活きとした造形物へとゴミを変貌させます。これらの作品では、その土地の生活の匂い、人々の息遣いまでが浮き彫りにされています。淀川テクニックの作品にヴィヴィッドで遊び心あふれる水生、陸生動物が多いのも、命を失ったゴミに再び生命を与えたいという彼らの願いが込められているからだといえるでしょう。
本展では、初期の代表作から熊本のゴミを用いた新作までを紹介する美術館での作品展示に加え、ゴミを集めた野外での公開制作やワークショップなどのアートプロジェクトも開催します。淀川テクニックのゴミニケーションによって、熊本がどのように表現されるのか、美術館の内と外で繰り広げられる彼らの創造的活動にぜひ触れていただければと思います。
(熊本市現代美術館主任学芸員 芦田彩葵)