山本富章(1949-)は圧倒的なスケールと強烈な色彩の絵画作品によって高く評価され、1980年代から国内外で紹介されてきました。活動の当初から愛知を拠点に、現在は豊田市の昭和の森近郊にアトリエを構えて制作を続けています。本展では山本が1980年代から追究してきた「ドット(色斑/粒)」を用いた二つの新作を発表します。ひとつは、豊田市美術館の特徴的な空間であるアトリウムの高さ約10m、横20mのガラス壁に14,000個の《bugs》が整然と並びます。小さな木製の洗濯バサミからなる《bugs》のなかの、さらに小さな無数の絵具の粒は、あたかも森の木漏れ日のように私たちの視覚を撹拌し、内奥の身体感覚を呼び覚ますでしょう。もうひとつの新作は、立ち枯れの切株をグラファイトペンシルで写し取ったフロッタージュです。そこでは「ドット」が自然のなかに再び見いだされます。さらに、70年代末から80年代にかけての「ドット」の発生をみることができる初期のコラージュや、横13mにもなる大規模な作品を加え、独自の絵画の方法で知られる作家の「ドット」の魅力に迫ります。