國府理氏は2014年4月29日、国際芸術センター青森(設計安藤忠雄)で開催中の展覧会『國府理展 相対温室』において展示作品の点検中の事故で亡くなられました。展覧会が始まって3日目の事故で展覧会はその後閉会となりました。享年44歳、これからを期待されながらのあまりにも突然の死でした。ギャラリーエークワッドでは、3回忌にあたる本年春に彼がたどってきた道を振り返り、作品の背景にある思想や制作意図などを探りたいと考えました。
今回の展示は、国際芸術センター青森で展示された作品《相対温室》などをできるだけ忠実に再現展示するとともに、その他の作品やドローイングなども加えて展示・紹介をいたします。
1970年生まれの國府氏は、自動車や自転車あるいはプロペラなどいわゆる工業製品を扱った多くの作品を手掛けてきました。その多くが、動きを伴ったものでした。一方で、その中に草木を植えたり水や水蒸気をといった自然現象を取り込んで、人工と自然を対比させその関係性そのものに作品の軸を置いてきました。しかしその関係性は対立する関係ではなく“共存”を前提としたものでした。その共存できる仕組み『メカニズム』を考え出すことこそ、國府理氏の創作の原点があったのではないでしょうか。
彼の作品作りの現場は、アトリエというよりは作業場といった感じが強いものでした。その制作過程を見ていると“ものづくり”の技と精神に満ち満ちています。モノそのものが持っている本質や魅力を最大限に引き出し、格闘している様は芸術家の創作活動というよりは、“純粋労働作業”といった方が良いかもしれません。素材を厳選し細部までこだわり自身の手で作り続けてきた彼の制作スタイルは、デジタル時代の中では特異なその意味で貴重な存在だったと言えます。
この展覧会を通じて、國府理氏の世界観を追体験しその作品や思想を改めて俯瞰したいと考えています。
展覧会開催にあたりましては、國府家の皆様や、国際芸術センター青森はじめ多くの方々のご協力・ご尽力をいただきました。ここに改めまして感謝の意を表したいと思います。
公益財団法人 ギャラリーエークワッド 館長 川北 英