四方を海に囲まれた日本の国土は、内陸には山々が連なり、山岳、湿原、湖沼、峡谷、清流と、変化に富んだ表情豊かな山と野に囲まれています。私たちが暮らす群馬も、武蔵野の奥、海から離れた内陸にあって山野の情景が美しい地勢が広がります。こうした気候風土は、日本人の自然観にも影響を与えています。
山はランドマークであるとともに、人に恵みを与え、ときには災禍を招き、人知を超えた存在として畏敬されてきた、地域の信仰対象でもあります。そして、人の手が入らない寂寞とした原野が持つ自然の趣は、自然の造形の神秘を感じさせます。
現代人が雄大な自然の光景に心奪われ、人里離れた山野に生きる鳥や動物、植物に魅力を感じるのは、先人たちが畏敬してきた自然に対する記憶を引き継いでいるからかも知れません。
本展覧会では、“山”と“野”をキーワードとし、日本画に描かれた山野の情景を辿ってみたいと思います。