〈もうひとつの風景〉と題された今回の展覧会では、日本ポラロイド株式会社より提供された、ポラロイド35mmインスタントスライドシステムを使用し、1984年から一年間にわたって撮影されたシリーズ「軌道回帰」を中心に紹介します。植田の写真は、私的な心情を素直に映し出しています。このシリーズ「軌道回帰」も、風景として表出された「見える」ことの側面に、自らの内なる次元を投影した「もうひとつの風景」として創作しています。その二重の風景には、「見える」ことをとおし、転写された私的な風景に自分の存在を認識しようとする作家の姿が感じられます。このシリーズは、植田正治の作品集「軌道回帰」として1986年に出版されています。
今回の展覧会は、これらのモノクロームとカラー作品の200余点をご紹介することによって〈もうひとつの風景〉の軌跡を辿り、その全貌を展望しようとするものです。