記憶の残響がこだまする。
時代を超えて「見てしまった」二人
明治に生まれ大正に生き、昭和に没した竹久夢二。かたや、昭和に生まれ、平成の世に活躍する細見博子。細見は、アクセサリー創作からスタートし、造形作家へと導かれるように歩みを進め、現在はアート系美術館の企画展にも名が上るクリエイターのひとりです。
二人はいわゆる正規の芸術教育を受けず、独自の世界をつくっています。創作のスタートは、夢二は雑誌のコマ絵、細見はアクセサリーと、大衆の心や時代の空気に時に寄り添い時に牽引することが求められる商業デザインから始まりましたが、二人ともその商業デザインの枠内にとどまってはいられませんでした。夢二がコマ絵作家から出発し画家・詩人・デザイナーとして幅広く活動したように、細見もアクセサリー創作以後、錫とガラスという異素材の組み合わせで独特の「生き物」たちを制作し、物語を誘発し世界観を提示する立体作品を創作しています。
夢二の作品のなかには、実は「眼」が独特な表現で描かれている作品が少なからずあります。象徴として眼が描かれているもの、背景に眼が描かれているもの…いずれもそれらの「眼」は、代表とされる美人画から少し離れたメッセージ性の強い印象を放っています。そして晩年、夢二が海外へ渡航し挑戦を図った時の、ロサンゼルスのアトリエの看板にも「眼」が印象的に使われています。細見博子もまた、初めに立ち上げたアクセサリーブランド[Bamboo Magic]のロゴマークに、「世界を見つめ、目撃し続けようとする意志を込め」て、奇しくも同じ「眼」を選んでいます。
図らずしも、時代を見てしまう/見えてしまう、直観ともいうべき心の目を持ったことに意識的であった2種の才能。夢二は没年49歳。当コラボレーションに応える細見もまた今49歳を迎えています。
それぞれにゆかりを持った地・岡山に空間を得て、時を超え、2つの目と作品群が交錯する濃密な空間をご体験ください。