島根県立石見美術館では、企画展「こどもとファッション 小さな人たちへのまなざしの歴史」開催にあわせ、特別展「幼き衣へ」を開催します。
今回は、子どものために作られた着物、なかでも「背守り(せまもり)」がほどこされた作例を紹介します。「背守り」とは、子どもの健やかな成長を願って子どもの着物の背中にほどこした飾り縫いのことです。着物を日常的に着ていた昭和初期頃まで日本各地で見られました。そこに機能性の面からは説明の難しい、多様で豊かな手仕事を見ることができます。大正から昭和初期にかけて、合理性が重視される風潮のなか子ども服の洋装化が進みます。その一方で、「背守り」をほどこした子どもの着物は、洋装の子ども服と入れ替わるように姿を消していきました。さらにまた、このたびの展示では、子どもの着物を撮り下ろした石内都の写真作品も展示します。石内は「背守り」のある着物とともに、子どもの無事の生育を願い端切れをもらい集めて作った「百徳(ひゃくとく)着物」なども撮影しました。それらは、生地の肌理(きめ)だけでなく、着物に込められた親の想いまでも鮮やかに浮かびあがらせます。子どもという存在に光をあてるこの二つの展覧会が、子どもについて考えるきっかけとなることを願っています。