「幻の画家」、「孤高の画家」、「謎の画家」・・・。
大正・昭和期、画壇に属さず黙々と制作を続けた洋画家、長谷川潾二郎(1904-1998)は遅筆にして寡作、作品発表の場が少なかった為しばしばこの様に称されます。しかし写実的でありつつも幻想的な独特の画風は、活動当時から一部の高名な批評家・画商の間で高く評価されていました。
この伝説的画家に魅了された1人、故藤井純一氏は岡崎市で長年にわたり作品の蒐集を続けてきました。藤井氏のコレクションは約130点の油彩画の他に版画やデッサン類、画材道具、モチーフからなり、現在は岡崎市美術博物館の所蔵となっています。
潾二郎が信条とししたのは、目の前の現実世界を見つめ、「実物によってうまれる内部の感動」を描くことでした。身近に存在する風景や日用品の数々と静かに向き合うことで見出した、日常に潜む美や奇蹟、さらには現実を通して画家が捉えた神秘的な世界が作品には現れています。
本展覧会では潾二郎作品の中でも人気の高い作品から、これまでほとんど展示されたことのない作品までご紹介いたします。藤井コレクションを通して、画家の人物像、そして作品の魅力を感じていただければ幸いです。