東洋の美術では、花は古くから絵画に描かれ、工芸品の陶磁器や衣装などの意匠に取り上げられてきました。白居易(はっきょい)が友人に向けて詠んだ詩の中に「雪月花時最憶君」(雪月花の時 最も君を憶う)とあるように、身近な自然の中でも、花は季節を感じさせる美しい景物の象徴として挙げられています。
花や植物は感傷して愛でるだけでなく、季節の移ろいを感じ、また吉祥の意味も読み取ることができます。また、梅と鶴を愛した宋の林和靖(りんなせい)や自らを菊に喩えた晋の陶淵明(とうえんめい)などの文人は、花を愛し、その姿に高潔な人格を重ね合わせました。これらの人々と花の組み合わせもまた画題となり、美術の中にあらわされています。
この展覧会では、絵画や工芸品における花を中心にした植物の表現から、中国・朝鮮半島・日本それぞれにおける様々な花や植物の姿と人々の季節に寄せるまなざしを見ていきます。
展覧会を開催する冬から春へ季節が移り変わる時期は、大和文華館を取り囲む文華苑が最も華やかな季節です。香り高い梅に木蓮(もくれん)や枝垂桜(しだれざくら)が続き、椿、雪柳(ゆきやなぎ)、連翹(れんぎょう)、菊桃(きくもも)が彩りを添えます。文華苑の自然の花と展示場の美術作品の花を合わせてお楽しみください。