桃山時代には長い戦乱が終わりを告げ、徳川家康が慶長8年(1603)に江戸幕府を開くと、約260年に及ぶ江戸時代の太平の世が続きます。都市が復興し、祭礼や行事が再興され、諸芸能も盛んとなります。新しい時代が幕を開ける中で、それまで文化を担っていた公家や武家だけでなく、富裕な町人や農民による文化も花開きました。絵画においては、伝統ある狩野派や土佐派の絵師たちだけでなく、在野の新興画派が次々と登場し、多様となった嗜好に応えました。その代表格として挙げられるのが琳派です。京都の裕福な町衆の出身で、桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した本阿弥光悦 (ほんあみ こうえつ)・俵屋宗達 (たわらや そうたつ)にはじまり、京都の豪商の家に生まれ、江戸時代中期に活躍した尾形光琳 (おがた こうりん)・乾山 (けんざん) 兄弟、姫路藩主の子弟として生まれ、江戸時代後期の江戸で活躍した酒井抱一 (さかい ほういつ)などと、その流れは受け継がれていきます。絵画と工芸を融合する豊かな装飾性といった特色を持ちつつ、時代の好みや各絵師の特色を反映させながら、魅力的な作品を生み出していきました。
絵画の画題に目を向けると、平和の世の中が続き、庶民層の文化も盛んになったことにより、現実世界の華やかな風俗に目を向けた風俗画も隆盛しました。
本展観では、宗達・光琳・乾山・抱一らの琳派作品と、国宝「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」をはじめとする風俗画作品を展示します。琳派と風俗画は、大和文華館の絵画コレクションの中でも充実した作品を誇っています。活気に満ちた桃山・江戸の文化の粋をお楽しみください。 (担当 中部義隆・宮崎もも)