1960年代初め、鉄を直接刻み溶接する、重量感ある作品で鮮烈なデビューを果たした若林奮(1936-2003)。二度に渡るヴェネツィア・ビエンナーレへの出品や、国内外での数々の個展開催等、戦後日本を代表する彫刻家として、第一線で活躍しました。若林は、木や石、鉛や銅、硫黄や紙等の多彩な素材を用いながら、やがて従来の彫刻の枠組みを超えた、外部の環境世界へと視線を向けてゆきます。自然の中の大気や水、植物の成長や時間の重なりといった、不可視で、彫刻にし難いものへの洞察を深めつつ、1980年代以降はより大規模な「庭」の制作に取り組みました。
「飛葉と振動」は、若林が最晩年の彫刻につけた言葉です。空中に舞う植物の葉と、自身を取り囲む世界や自然を感じ取るための振動。そしてそれらを感得する庭。本展は、これまであまり光を当てられることのなかった若林の庭をめぐる作品を中心に、彫刻、ドローイング、関係資料を展示します。
また、うらわ美術館では特別出品として、若林が手がけた、本に関連する作品の数々をご紹介します。本を取り込んだオブジェや、ドローイングを施した冊子、植物の葉を転写したノートや家族のために作った絵本、そして本や雑誌の装幀・挿画等、制作や思索に寄り添いながら呼応する、若林の本の世界の魅力に迫ります。